グラスウールで、
温熱環境をココチよく
2.断熱材の仕組み
断熱材の断熱性能は、素材自体の「熱伝導」、内部に含まれる気体の「対流」、材料内での「輻射」の三つの要素で決まります。
伝導とは: | 物質内部の分子運動などによって熱が伝わる現象。一般的には、金属など比重の大きいものは熱伝導が大きく、固体>液体>気体の順になる |
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対流とは: | 気体や液体などの流体が、温度差により流体自体の移動によって熱が伝わる現象。気体や液体は、温度が上昇すると膨張して比重が軽くなり、上昇移動することで熱が伝わる。 |
輻射とは: | 物質の温度に応じて発する遠赤外線などの電磁波により熱が伝わる現象。放射ともいう。伝導や対流と違い、物質を介さない熱の移動である。 |
繊維系断熱材の一種であるグラスウールは、原料であるリサイクルガラスを高温で溶融し、綿状に繊維化したものの集まりです。この繊維が互いに絡み合い、多数の空間(動きにくい空気の小部屋)ができることで空気の対流を抑えることにより、断熱性能を発揮します。
3.グラスウールの断熱性能
グラスウールに限らず断熱材の断熱性能は、「熱伝導率(λ(ラムダ)値)」と「熱抵抗値(R(アール)値)」と呼ばれる値で表されます。
熱伝導率(λ値): | 同じ厚さの断熱材を比較して熱の伝わりやすさを示す値。熱伝導率が小さいほど、熱が伝わりにくいことを表す。[単位:W/(m・K)] |
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熱抵抗値(R値): | 実際に使用される断熱材の厚さを加味して、熱の伝わりにくさを示す値。熱抵抗値が大きいほど熱が伝わりにくい、つまり断熱性能が高いことを表す。[単位:㎡・K/W] |
熱伝導率(λ値)と熱抵抗値(R値)のあいだには、以下の関係式が成り立ちます。
λ値には、実際に使用される場合の断熱材の厚みが考慮されていません。施工時の一般的な厚みを考慮した断熱性能はR値で示されます。つまりλ値の小さい断熱材を選んでも、実際の施工時に断熱材の厚みが薄いと、結果としての断熱性能は低くなってしまいます。
一般的によく使われる3種類の断熱材の性能を比較してみると、次のようになります。
高性能グラスウール16K | 押出法ポリスチレンフォーム(3種) | 高性能フェノールフォーム | |
---|---|---|---|
熱伝導率 λ値 | 0.038 | 0.028 | 0.022 |
一般的な施工厚さ | 105 mm | 50 mm | 35 mm |
熱抵抗値 R価 | 2.8 | 1.8 | 1.6 |
※熱抵抗値は、住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書記載の熱伝導率を用いて計算されたものになります。
断熱材の熱伝導率は様々な因子によって変化しますが、繊維系断熱材であるグラスウールの場合、温度に加えて、密度や繊維径によってもその熱伝導率が変化することが知られています。
① 温度と熱伝導率
温度と熱伝導率の関係
【出典】断熱建材協議会、『断熱建材ガイドブック』
② 密度と熱伝導率
密度と熱伝導率の関係
【出典】断熱建材協議会、『断熱建材ガイドブック』
③ 繊維径と熱伝導率
グラスウールの密度が同じでも、繊維の太さによっても断熱性能が変わります。繊維の太さが細くなると同じ密度でも繊維の本数が増える為、グラスウール中の空気室がより細分化され断熱性能が高くなります。
繊維径と熱伝導率の関係
【出典】断熱建材協議会、『断熱建材ガイドブック』
4.高性能グラスウールとは
通常のグラスウールに対して、高性能グラスウールとよばれる製品があります。
通常のグラスウールの繊維の太さは平均7~8μm程度ですが、高性能グラスウールと呼ばれる製品では平均4~5μm程度です。一般のグラスウール断熱材に比べ繊維径が細く、よりたくさんの繊維が絡み合っています。
表 グラスウールの熱伝導率[W/(m・K)]
密度 [kg/㎡] |
通常 グラスウール |
高性能 グラスウール |
---|---|---|
10 | 0.050 | 0.043~0.045 |
16 | 0.045 | 0.038 |
24 | 0.038 | 0.034~0.035 |
そのため、同じ密度でも高性能グラスウールは熱伝導率がより低く、高い断熱性能をもちます。
5.優良断熱材認証マーク(EIマーク)
近年、住まいの高断熱化が推進されています。「住宅性能表示制度」で建物の断熱性能と省エネ性能をランク付けする「断熱性能等級」に関して、2022年4月にはZEH水準の「等級5」が、10月には「等級6・7」が新設されました。また、現行の省エネ基準の仕様基準に加え、ZEH水準の仕様基準(誘導仕様基準)も新設されました。
硝子繊維協会では、誘導仕様基準の3~7地域における壁の充填断熱の熱抵抗値基準熱抵抗値2.7[㎡・K/W]以上の住宅用グラスウール断熱材に対し、高断熱住宅に適した高性能グラスウールの目印として優良断熱材認証マーク(EIマーク)をつけています。EIマークとは、一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会によって優良と認証された断熱材につけられる認証マークで、そのマークを表示する制度が「優良断熱材認証制度」です。
認証の対象となる断熱材は以下のとおりです。
・住宅と建築物の主要部位に使用されるもの
・熱抵抗値2.7[㎡・K/W]以上かつ熱伝導率0.038[W/(m・K)]以下であること
・JIS認証品、或いはISO9001登録工場において安定した熱性能を適切な品質管理のもとに維持し、生産される商品またはそれらと同等の製品であること
・健康安全性及び環境への配慮がされていること
6.まとめ
断熱材は、住宅の温熱環境を心地よくするためには欠かせない材料です。繊維系断熱材の一種であるグラスウールは、綿状の繊維が互いに絡み合ってできる多数の空間によって空気の対流を抑え、断熱性能を発揮します。
高性能グラスウールは通常のグラスウールよりも細く、繊維径4~5マイクロメートルで製造されています。一般のグラスウール断熱材に比べ繊維径が細く、よりたくさんの繊維が絡み合っているので、断熱性能 がさらに向上しています。
高断熱・高気密住宅に適した熱抵抗値2.7以上の高性能グラスウールには、目印として優良断熱材認証マーク(EIマーク)をカタログなどで表示しています。
高性能グラスウールはこれからも、省エネで健康・快適な高断熱・高気密住宅づくりをサポートします。